「親を扶養する義務」
【相談内容】
 田舎で一人暮らしの85歳の母から「最近、手足が不自由で一人で生活するのがきつくなってきた。なんとか面倒をみてもらえないか」という手紙がきました。田舎には長男である兄夫婦がいるのに、他家に嫁いだ私にも親を扶養する義務があるのですか?
【相談処理内容】
 年をとれば誰でも体が衰え収入も減るなどして、一人で生活するのが困難になり誰かの扶けが必要になります。親の老後は長男がみるのが当たり前と考えている人が多いようですが、法律はどうなっているのでしょうか。
今回は、法律で定める扶養義務者は誰なのか、扶養の程度、順位、方法などについてご紹介します。
◎ 扶養義務者
民法では「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養する義務がある。」と定めています。子供の親に対する扶養義務は、長男・次男や男女の別、結婚の有無に関係なく全員あるということです。また、祖父母と孫にも互いの扶養義務があります。
そして、特別な事情があるときは、家庭裁判所は3親等内の親族間においても扶養義務を負わせることができるとされています。
◎ 扶養の程度
扶養の程度について、扶養義務には次の二つがあるとされています。

@自分と同じ程度の生活を保障する義務
A生計の立てない者を生計が立つように最低限の生活を保障する義務
配偶者や未成年の子に対しては@の義務、親や兄弟姉妹に対してはAの義務というのが一般的な考え方です。もちろん、経済的に余裕があれば自分以上の生活を保障することも可能ですが、一般的には、まず配偶者や未成年の子を扶養し、なお余裕があるときに親を扶養するということになります。
◎ 扶養の順位
扶養義務者が複数いる場合の順位については、法律の定めはありません。まず、当事者間で話し合って、まとまらないときに家庭裁判所が決めることになります。家庭裁判所では、各扶養義務者の経済状態や家庭の状況など一切の事情を考慮して決めますが、配偶者および未成年の子を養ってなお余裕のある者に扶養義務を負わせ、余裕がなければ負わせられません。
◎ 扶養の方法
現在では、生活費を負担する金銭扶養が多いようですが、親を引き取るか同居して面倒をめる引取・同居扶養もあります。このほか、施設に面倒をみてもらいその費用を負担する方法などがあります。
扶養の方法は、当事者が話し合ってきめますが、その場合、扶養権利者(親)の気持ちを十分聞いて、できるだけその意に沿うよう務めることが望ましいことです。
なお、話し合いがまとまらないようなときは家庭裁判所が決めてくれます。
◎ 嫁の扶養義務
嫁の場合、直系血族でも兄弟姉妹でもありませんから、通常、法律上の扶養義務はありません。しかし、婚族の1親等ですので、特別な事情があるときは家庭裁判所から扶養義務を負わせられることがあります。
「特別な事情」とは次のような場合が考えられます。「義父が死んで長男である夫が義母の住居を相続した。その夫も死んで義母と二人きりになったが、義母にはほかに住むべき家がなく扶養できる子もいない。」
◎ まとまらないときは
民法では扶養の問題は話し合いで決まることを期待していますが、話し合いでまとまらないときや話し合いが持たれないときは、家庭裁判所へ扶養調停の申し立てをすることができます。申し立ては、扶養権利者(親)あるいは扶養義務者(子)のどちらでもできますが、申立先は、原則として子供の居住地の家庭裁判所です。家庭裁判所の調停・審判で解決しないときは、裁判で解決することになりますが、できることなら親族間での裁判は避けたいものです。なお、扶養義務者全員が親を扶養する余裕がないときは、生活保護などの公的扶助に頼ることになります。
人間誰しも自分のことが一番可愛く大事ではありますが、親の扶養においては、扶養する側、される側がそれぞれ自分のことばかりではなくお互いが相手のことを思いやる心をもつことが必要ではないでしょうか。